200_FRセダン3(惜別)

ありがとう。

海外では評価も高く、かなり売れたみたいだけど、日本ではあまり売れなかったらしく、一般的な評価や人気度も低かったのかもしれないが、自分にとっては分不相応で贅沢な車だった。

大手国産メーカーのれっきとした新車を購入したのにもかかわらず、不定愁訴というか、謎の電装系の不具合にも随分悩まされ、何度も修理に出す羽目になったから、たまたまハズレ個体に当たってしまったのかもしれないが、販売店(ディーラー)の人達も根気よく対応してくれたし、実用車としては申し分のない車だった。

全幅・全長の外寸のかなり大きな昨今の車からすると、それなりに扱いやすい小ぶりさで(とはいっても、5 ナンバー車や軽自動車のようにはいかないが)、FR の駆動方式による、ほぼ完璧に近い理想的な前後重量配分と、フロントオーバーハングも短く、タイヤの切れ角も大きく、小回りもよく利いた。

低い全高ばかりがほとんどの同類車種(= 4 ドアセダン)の中で、空力特性も良好な数値ながら、高めの全高とロングホイールベースのお陰で、居住性もそこそこよかったし(*)、トランクの開口部も広く、外寸形状もいたずらに絞り込まれた形ではなくスクエアに近いために中も広く、ヒンジも内側に干渉しない方式のもので本当にありがたかった。

出だしのエンジン音だけはあまり静かではなかったが、ロードノイズなどの遮断による静粛性はまずまずで、中速域に乗せ、丁寧なアクセルワークを心がけさえすれば、 V 型 6 気筒ならではの(初速時を除く)静かで滑らかなエンジンフィールも本当に快適だった。

長い間、本当にお世話になりました。

心から感謝しています。

ありがとうございます。

さようなら。

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(*)居住性がそこそこよかったとは言うものの、残念ながら、適正な全高と箱形スタイルをきわめているクラウンコンフォートには敵わない(トランクの使い勝手だけはクラウンコンフォートよりよかった)。 運転しやすい手頃なサイズ感で、クラウンコンフォートのあのスクエアなスタイルから得られる室内の解放感とヒンジドアでの乗降性の良さは、おそらく国産 4 ドアセダンの中では唯一無二だからだ。

クラウンコンフォートのあのスクエアをきわめたスタイルにより確保される室内空間や、ヒンジドアの形状が四角形に近いことによる乗降性の良さ、室内からの視界の良さ(=見晴らしの良さ)は、近年の国産 4 ドアセダンの中では、多分、最高峰だろう。

低い重心を確保するために全高を下げ、空力や流行り(トレンド)を重視するスタイルを目指せば、結果としていやが上にも室内空間が削られ、ヒンジドア形状の鋭角化による乗降性の良さが削られることは避けられないからだ。

セダンは最近不人気なようだし、車種もどんどん減らされ整理されてきているので、あまり文句みたいなことは書きたくないが、私は背が高めなので、車体の全高の低さ(≒室内高の低さ)と前後左右のガラスのキツイ絞り込みからくる、室内の防ぎようがない圧迫感や閉塞感、さらには、鋭角的なナイフのようなドア形状からくる、危険を伴う乗降性の悪さがどうしても気になってしまうのだ。

という訳なので、まあ、ご勘弁下さい。

(追記)
最近のユーチューブに、身長 177 cm のドイツの若い女性が、日本の車は小さくて、乗降時に頭をドアの開口部に何回もぶつけたという話があった。

これはおそらく、ヒンジドアの形状とヒンジドアの開口部の形状がかかわっているんじゃないのかな?

しかし、だからといって、彼女のような体格の人が身体をたくさんひねらずに余裕で乗降できるようにするためには、車の外寸はさらに巨大なものになってしまう。

彼女が乗降したのは、クラウンコンフォートかどうかはわからないが、もしもクラウンコンフォートでこの有り様なら、他のセダンはもっと厳しいということになってしまう。

クラウンコンフォートも、タクシー専用車だからと割り切った設計だからこそ、あのような日本の道路事情に合って使いやすいセダンになったと思われる。

タクシー等の業務用以外の普通の市販向けなら、クラウンコンフォートのような車は絶対に企画・開発されることもなかっただろうし、誕生することもなかっただろう。

おそらく、タクシーや教習車用途で、同業他社のセダンを徹底的に駆逐するために、素朴な使いやすさを追求したからこそ、あのような割り切った設計の車になったのだろう。

それは、現代のトヨタの他のプリウスをはじめとした一般向けのセダンと比べれば明らかだからだ。

トヨタ車のセダンで、強いてクラウンコンフォートに近い設計思想のセダンを挙げるとすれば、プレミオ・アリオンだろう。

プレミオ・アリオンは、駆動方式は FF ではあるし、全高をはじめとして、クラウンコンフォートとは明確な差がある(ただし、市販車としての細かい作り込みはプレミオ・アリオンの方がずっと上だろう)が、日本の道路事情と交通事情に配慮した、きわめて使い勝手のいい、良心的につくられた隠れた名車と言っても差し支えないだろうね。

名より実を取る人には、まさにもってこい、といった感じかな(日本専用車的な色彩が薄れたこともあるが、カローラやカムリ(生産終了)は外寸が大きくなり過ぎた(しかし例によって相変わらず全高は高くない)から)。

ただ、残念なことに、プレミオ・アリオンクラウンコンフォート同様、すでに生産終了になってしまっている。

そのように考えてくると、実際の使い勝手から、SUV や軽自動車の販売台数が多いことにも影響があらわれているんじゃないのかな?