184_素質

ユーチューブで、プロ野球南海ホークス杉浦忠投手の現役時代の映像を見た(私が見たのはカラー映像のもの。サムネイル画像にも、最近のユーチューブに自動で上がってくる動画にしては珍しく、思わせ振りでいやらしい詐欺まがいの煽り文句が一切ないので、とてもすっきりとしていて、外連味のない好感の持てる動画だった)。

杉浦さんのお姿は、流れるような投球フォームから、力強くボールをリリースして投げ込んでいるような感じに見えた。

杉浦さんは、南海監督時代の穏やかでやさしいお人柄を醸し出す風貌の映像しか見たことがなかったので、やはり、現役時代の映像を見れたことは本当によかった。

尾崎行雄さんや金田正一さんや山口高志さんなど、他の名だたる速球派のピッチャーの映像もいくつか見たけれど、何か乱暴というか、叩きつけるような投げ方(だからこそ豪速球なんだろうけど)に見えたものが多くて、杉浦さんのような流れるような美しいフォームのような感じがしなかった。

野村克也さんのどの本だか忘れてしまったが、練習時に、同じ俊足でも広瀬叔功さんは、どちらかというとギクシャクした感じの走りだが、杉浦さんはカモシカのような美しい走りだったように書かれていたことを覚えている。

酷使のせいもあったのか、投手寿命は短めながら、凄まじい成績を残された方なので、どのような選手だったのか知りたくても、想像しかできなかった。

やはり、百聞は一見に如かずなので、たとえわずかでもそうした凄い人の実際の映像を見ることができるのは格別。

自分の経験からすると、130 km 台の直球でも受けるとかなり速いと感じたので、こうした人達の速球は、想像を絶する速さなんでしょうね。

また野村さんの本には、全盛期の杉浦さんには細かい正確なコントロールはなかったけれど、大体、ストライクに投げ分けるコントロールはあったので、ストライクさえ投げさせておけば、浮き上がるような速球も、ものすごい曲がりのカーブも、まず、前に打ち返される(=飛ぶ)ことがないとされていた。

だから、キャッチャーとしては、きわめて退屈で、楽につとめられたように書かれていた。

要するに、球威だけで相手のバッターを簡単にねじ伏せることができるので、ストライクさえ投げさせておけば、リードに創意工夫をしなくてもよかったほど、力のある凄いピッチャーだったということなんでしょうね。

昔のユニフォームは、名前もないし、ソックスがきちんと出ていて、今のようなズボンのような形ではないので、とても新鮮な映像に見えた。

あか抜けてはいないかもしれないが、いかにも中に筋肉をまとった人間がいて動いているという感じがして面白かった。

ただ、昔のパリーグの宿命なのか、日本シリーズの巨人戦以外の外野スタンドが、かなり閑散としているように見えたのが気になった。

あれじゃあ、野村さんが月見草と言う(嘆く?)のも無理はないよね。

せっかく選りすぐりの才能が集まった丁々発止の勝負が展開される場所なのに、お客さんの入りがあれじゃあね。

巨人は巨人なりに大変なプレッシャーのある球団だったのかもしれないが、巨人と南海のお客さんの入り具合の映像の違いを見ると、何とも言えない気持ちになりますね。

本当に残念。

(追記)
どんなに凄い球を投げていても、相手を威嚇するポーズや、勝ち誇るガッツポーズが一切見られなかったのも、個人的にはきわめて感じがよかったな。

杉浦さんのお人柄だったのかもしれないけれど。

昔の人は、おおむね、内心はともかく、表向きは淡々としていたのかな。

よくわからないけれど。

野村さんの本には、足が速いこと、速い球を投げること、打球を遠くに飛ばすことは、持って生まれた才能によるところが大きいようにも書かれていた。

だから、速い球を投げることは、投手としては永遠のロマンなんだろうな。

人々の憧れとなる、ああした球を投げることができて、活躍することができたら、本当に幸せな人生なんだろうな。